神経損傷について

 不幸にも神経を損傷した場合、真っ先に考えるのは「治るのか?」という事ですが、中枢神経は再生せず、末梢神経は「再生能力を持つ」という記述をよく見かけます。

 でも、「再生能力を持つ」イコール「末梢神経の損傷は完治する」という事では無く、損傷の状態や治療方法、患者さんの健康状態などによって、様々な経過をたどる様です。

 

 専門書等を見ると、末梢神経の損傷の程度を区別するために、『Seddon の分類』がよく使われています。

 

 1. neurapraxia (神経遮断、神経麻痺、一過性伝導障害)

 2. axibitnesis (軸索断裂)

 3. neurotmesis (神経断裂)

 

と大きく3つの分類がありますが、3番目の分類(neurotmesis)が最も重い損傷状態で、一般的には自然回復は期待できないと言われています。

  他にも『Sunderland の5段階の分類』があります。

 

 これは、私の体験からですが、舌神経損傷の治療では、損傷レベルがどの段階なのかを見極めた上で、レベルに適した治療方法を選択することがとても重要だと感じています。

 

※私の場合は、神経の再建手術の適応症例でしたが、患者さんの損傷レベルによっては手術を見送り、星状神経節ブロック注射などを併用しながら自然治癒を待つケースもあります。

 

参考文献Bには、3つのレベルにおけるニューロンの状態や再生過程について解説が載っています。

 

※舌神経はレントゲンでは確認できないため、開けてみないと分かりません。もちろん気安く開けるてみることができないため、知覚や味覚の検査データと経過観察(改善傾向)から総合的に診断…という事になります。

 

※妊婦さんのお腹の中の胎児や、最近では太い神経なら確認できるような超音波診断装置がありますが、舌神経も同じ方法で確認できるようになれば…と思っています。口中の奥の方で視野が狭く、細い神経であるため、今の超音波診断装置では精度が課題なのかもしれません(専門家の方、ご意見を頂ければ幸いです)

 

※一般的には、神経の修復手術を行う場合は、なるべく早い方が良いと聞きます。もし、非侵襲で正確に舌神経の損傷状況を診断できれば、患者さんの負担は大きく減るでしょう。(私の場合は、経過観察の数ヶ月間は、日に日に強くなる疼痛と心理的なストレスとの闘いでした)

 

 ※当初、舌の麻痺を自覚し、今後どうなるのかとても不安に駆られていた私は、まず最初に、インターネットを片端から検索しました。けれども、ネット上のすべての情報を対象に調べはじめると、舌神経麻痺についての情報が少ない上、全く異なる意見や見解が出てきました。

 歯科医と名乗る人の書き込みや、ネット医療相談での歯科医の回答ですら、知識も見解もバラバラで、時には呆れた内容のものも少なからず有り、どの情報を信じるべきか悩んだ結果、基本的には論文と専門書に絞って情報を集めることにしました。