◆神経再建手術(2013/8)
術前説明
手術の2日前の午後に入院。
この日の夜に、教授を含む3名の医師から術前の説明。(家族同伴)
今までの同様の手術の写真/VTRダイジェスト(顕微鏡手術のアップ画像)を見ながら説明を受ける。
(→始めはちょっと怯むが、見ているうちに慣れてくる…)
◆術前説明
・外頚静脈を反転して神経縫合部に被せて縫い付ける
→再生の場をつくる
→神経は縫合してもテンションが大きいため縮もうとする
縮もうとする神経を静脈が保護しながら引っ張る
・静脈が細いと効果が期待できない
(→どうか太い静脈でありますように★★★と祈りを捧げる)
・手術の中で最も時間がかかるのは、中枢側の断端を見つけるまで
・出血量は少なく、むしろ唾液との戦い
(→美しい仕上がりに感動。なるべく早く断端が見つかればいいなと願う。)
(→VTRを観る事で、サイズ感がよくわかった)
・術後しばらくは、顔がパンパンに腫れる・むくむ
・3日間は点滴を行う(治りが早い)
・手術後数日は、鼻から胃へのチューブから栄養を取る
(口の中の清潔を保つ/栄養状態を保つことで治りを早める)
・遠方の人は、抜糸まで入院してもらうことが多い
(→この時点では、術後4、5日で退院する気満々だったが…
甘く見ていました。もう少し若ければ違ったかも xxx)
手術前日
◆前日
・オペ看護士の方から、手術準備/全身麻酔の方/覚醒時の流れについて説明あり
・顎、歯周辺のレントゲン撮影
・麻酔科医師より簡単な問診(既往症の確認)、手の血管や血行の確認
喉の奥、口の開き、首の曲がり具合の確認
・夕方、シャワー入浴
・口腔ケア
・早めの就寝
通常は、手術直後から疼痛は無くなり、一旦完全な麻痺感覚になる、というお話。
手術日
手術当日。朝早く、家族到着。(手術は家族待機が必要)
(→ここまで長かったような、あっという間の様な…。)
(→味覚無理でもいい。知覚さえ改善されれば。でも一番何とかなってほしいのは、この常時ある疼痛!)
朝食後、血栓防止用ストッキングとショーツ1枚だけ身につけた上に2枚の手術着を着て待機。
8:30にお迎え、歩いて移動。家族の見送りはエレベータに乗るまで。
手術室バックステージ(いくつかの手術室に接続する舞台裏?)に入り(広い)、奥の手術室に入室。
・名前とリストバンドのバーコードを確認。
・手術部位(右側・舌神経)を確認後、手術台の上へ(狭い!)
(→このあたりでやはり、ドキドキしながら、お相撲さんの場合は手術台の幅は変わるのだろうか…とどうでもいい事を考える)
・ここからは見事な手際で、複数のプロフェッショナルな方々が、
心拍数や血圧や脈拍やらを測るセッティングを一斉に(速!)
・酸素マスクを被せられ、左手の甲に点滴用の針を…
刺さりにくかった様で1回で入らず、痛い…
(→と思うと、心拍数のピッピッ音が速くなるので、なんだか恰好悪い。)
無事血管に点滴針が刺さり、「今からお薬入れますね。ちょっとピリピリします」と言われ、うわっ本当に体の中にビリビリとした異物が入ってくるかなり嫌な感覚があり「痛い…」と思ったあとの記憶無し。(麻酔って圧倒的すぎて恐ろしい)
◆◆◆
これ以降、およそ8時間弱、教授、先生方、スタッフの方々、本当に長時間ありがとうございました。お世話になりました。
◆◆◆
(目覚め)寝起きが良い日の様に、パチッと目が開き、「あっ、目が開いた!」という誰かの声。はい。
名前をよばれて返事をし、呼吸用の管が鼻から抜かれる。(ちょっとうぇっ)。教授の気配は無く、女医先生と少し会話。開口一番真っ先に気になっていた質問をする。
●私 「(神経)切れてました?」
●女医先生 「切れてましたよ」
●私 「今何時ですか?」
●女医先生 「夕方の4時半頃です」
●私 「すぐに(中枢側)の断端は見つかりました?」
●女医先生 「目視で舌神経の走行が確認できたのですわりとすぐに」
「そうそう、静脈太かったですよ!!」
●私 「よかったー」ほっとすると何だか疲れが。
そんな会話をしている間も、テキパキと機器が外され、術着が整えられ、せーのっで移動ベッドに移されました(プロフェッショナルだ)。
1時間くらい寝てすっと起きたような感覚だから眠くはなく、でも10キロくらい走った後みたいな、だるい感じ。(走らないけど)
病室に戻る
病室にベッドごと戻った時は、尿道カテーテルと、手の甲の点滴と、右鼻の栄養チューブ(麻酔中に入れてあった)と、3つの管がささった状態。
手術中に、呼吸の管などが外れないように長時間しっかり顔にテープで留められていたため、皮膚の薄い私の顔は数か所、ペロンと捲れた様で、傷保護用のテープが両頬に数か所。
(→自分は病気ではなく事故による怪我だ、という妙な自意識があった私。でも完全に病人の様な有様でした。もう、何でもいいや)
病室でおそるおそる鏡を見たけど、右口角は一部裂けて、上唇も2,3か所薄い裂け目ができていたけれど、まぁ治る程度の傷で「この程度ならOK」とほーっ、としました。
部屋でベッドに寝たまま、鼻の栄養チューブが胃に入っているか確認するためのレントゲンを撮影。
●女医先生より説明
「顔はどんどん腫れます」「鼻の皮膚も赤いけど、良くなります」
●私
「先生、何かイイ事も言ってください…」
●女医先生
「イイ事…。静脈太かったです!立派。縫合し終わった後、ぴかぴかやなーって教授も言ってました」
(→…確かに朗報です。よもや人生で静脈の太さを褒められる機会があろうとは思ってもみませんでした。)
もっとも気になっていた疼痛、実はこの時「あれっ」と気づいていました。手術前よりもレベルはマシになっていましたが、ヒリヒリする灼熱痛は残っているのでは???…と。
神経の状態(縫合前と縫合後)
◆私の舌神経の切断状態◆
(藤田教授から頂いた写真とスケッチからイラスト化)
注:患者さんによってそれぞれ状態は異なります
術後の一般的な回復期の過程は省略します。
(→麻酔が抜けきるまではつらかったです。)
(→顔は予告通りパンパンに腫れ、頬と唇は傷だらけなので抜糸まで入院することにしました)
(→手術の傷は、私のケースでは合計7、8センチくらい?でしょうか。術後数日は鼻から栄養摂取だったのと、毎日朝夕の口腔ケアで、想像していたよりも治りが早かったです。)
首の傷の抜糸は術後5日目、口内の抜糸は7日目でした。
藤田教授より、手術所見と手術過程の写真を頂き、説明がありました。
◆神経の状態
・舌神経は口底粘膜直下に透けて見え、浅いところを走行していた(視認できた)
・神経は上皮だけでつながった状態で、中枢側は断端腫、末梢側は大きな瘢痕が神経を覆っている状態。
・神経が切れていたと思われるラインと、下あごの骨にくっきりと残っている掘り削ったラインがきれいに一致している。
(→おそらく、骨を削る時のバー操作等で傷つけたと思われる)
・放っておいたら、さらに痛みが強くなっていただろう。
・強靭な瘢痕から舌神経を見つけ出すための時間がかかった。
・最終的に断端腫と、瘢痕部をトリミングした後、中枢側神経と末梢側神経を縫合
・内外反転した外頚静脈で縫合部をカバーして完了。
(→術前の舌神経は、瘢痕は大きなコブの様、断端腫もすぐに分かる大きさ…)
(→術後の写真は、素人が見てもとても美しい仕上がり)
【上図】手術の手順 ステップ① → ステップ② → ステップ③
(藤田教授から頂いた神経縫合術の写真からイラスト化)
注:私のケースです
【参考】外頸静脈を使う場合の、首の手術ライン(舌麻痺側と逆サイド)
術後の疼痛
術後の目覚めから気になっていた灼熱痛(疼痛)。始めは(脳が変な記憶をしていて誤った回路信号を送っているのでは?)と思っていました。(断端腫も瘢痕も取って綺麗になったので、この瞬間どこから痛みの信号を出すのか??)と。
・神経が再生する過程で出る物質のせいで、過剰な刺激信号を送っているのかも…。
・オペは完璧だったので、きっと良くなる。あまり心配していない。
との説明。きっとそうなんだろう…と思うのだが、目下のところ一番期待していた、疼痛からの解放の目論見が外れ、心理的にはちょっと落ち込み。
以前と異なる点は
・常時ある疼痛ではなく、舌の動きに連動
(話す、食べるなど舌を動かす時だけヒリヒリ刺激痛)
・シュワシュワした痛みはなくなった。
・電撃痛は弱くなったが、下唇や頬をそっと触ると、かすかに感じる
(うまく説明できないが、誤った神経回路が誤信号を送っているような?)
教授と女医先生と相談し、疼痛の直接治療というよりは、神経の再生を促進した結果、疼痛が緩和されることを目的として、術後2週間ほど星状神経節ブロックを試すことに。
麻酔科で入院中に1、2回受け、続きは自宅に戻ってから、週3回程度を1,2週間、期間を決めて行うことにしました。